独立行政法人水産総合研究センター「北海道区水産研究所」

平成24年度さけます関係研究開発等推進会議

さけます関係研究開発等推進会議報告書

1 会議日時及び場所

  • 平成24年8月1日(水)9:30〜17:15
    • (さけます関係研究開発等推進会議−研究部会    9:30〜12:30)
    • (さけます関係研究開発等推進会議−成果普及部会 14:00〜17:15)
  • ホテルライフォート札幌(札幌市中央区南10条西1丁目)

2 出席者所属機関及び人数

  • さけます関係研究開発等推進会議−研究部会:15機関 64名
  • さけます関係研究開発等推進会議−成果普及部会:56機関 170名

3 結果の概要

さけます関係研究開発等推進会議−研究部会
議題等 結果の概要
1 各機関における研究開発の実施状況  さけます関連調査研究計画について、各道県の試験研究機関から提出された平成24年度研究開発課題および水産総合研究センターの平成24年度研究開発課題を一覧にして報告し、各試験研究機関より平成24年度研究計画の補足説明および平成23年度研究成果情報が紹介された。
 また、各試験研究機関が行った平成23年度の標識放流結果と平成24年度の標識放流計画について北海道区水産研究所から報告し、変更等があった場合にはさけます資源部に報告することが確認された。
2 さけます類の研究開発内容についての意見交換 (1)サケの来遊数変動について情報交換

 サケの来遊状況について、北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場から「北海道におけるサケの来遊状況」、新潟県内水面水産試験場から「新潟県南部でのサケ来遊数の減少について」が紹介された。
 サケ幼稚魚の状況について、岩手県水産技術センターから「岩手県の沿岸滞泳期におけるサケ幼稚魚の状況」が紹介された。
 また、北海道区水産研究所が「2011年サケ来遊状況:来遊不振から学ぶ」と題して昨年度の来遊状況および太平洋側の隔年変動の状況等を紹介した。
 その後、各地のサケの来遊数変動に関する情報交換を行い、問題解決に向けた今後の課題として、初期減耗や前期群減少の要因を特定するための作業仮設の構築と検証、不漁時における資源管理目標に関する研究、ふ化放流の現場での管理行程の再確認等が挙げられ、今後も連携して調査研究に取組むことが確認された。

(2)さけます類の自然再生産の助長およびふ化放流と野生魚の共存を目指した研究開発についての情報交換

 北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場から「北海道で取り組んでいる野生サケ研究について」、石川県水産総合センターから「手取川における自然産卵親魚と降下稚魚について」が紹介された。
 北海道区水産研究所が「サケマスの自然再生産量の現状について」を紹介し、さけます類の自然再生産に関する情報交換を行った。
 今後の課題として、野生魚分布の実態調査、増殖事業河川(捕獲・非捕獲)や未利用河川における野生魚の利用や管理方策の検討、ふ化放流魚と野生魚の相補的な管理方策による安定的な資源維持の必要性等が挙げられ、このような方策の検討に河川管理者を交えた検討も必要との認識がされた。
 また、昨年要望があった、共同応募が可能なプロ研の課題案として「自然再生産を利用した(さけます類)来遊安定化技術の開発」が提示され、来年度のプロ研応募を視野に入れて今後連絡を取り合うことを確認した。

3 その他  岩手県水産技術センターから、東北から北海道にかけての太平洋側のサケ来遊数減少の原因究明に向けて、基礎情報の収集を目的とする「太平洋沿岸におけるサケ幼稚魚の分布等に関する研究」について共同研究の要望があり、翌日に岩手県水産技術センター、北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場を含めた打合せを行うこととした。
 また、さけますに関するモニタリングデータのCD配布については、後日、配布することで了承された。

 
さけます関係研究開発等推進会議−成果普及部会
議題等 結果の概要
1 成果情報(さけます類の防疫対策と原虫病対策) (1)サケ防疫連絡協議会の設立
 
水産総合研究センターが、サケ防疫連絡協議会の設立趣旨や設立までの経緯、実施している調査の概要を説明した。
 この協議会の設立は、北海道におけるさけますふ化事業に携わる機関が連携して、サケ科魚類の疾病の予防・防疫対策を推進するための体制を構築し、我が国のさけます類の漁業の持続的発展に寄与することを目的としている。

(2)リスク管理に基づく さけます類の細菌およびウイルス病対策
 
北海道大学の吉水特任教授が、サケ科魚類の病原体(細菌とウイルス)リスク評価と有効な防疫対策を紹介した。
 サケに対するリスクの高い病原体として、ヘルペスウイルス、細菌性腎臓病(BKD)原因菌、細菌性鰓病原因菌、せっそう病原因菌が挙げられた。また、防疫のための重要な管理点として、病原体フリー用水の確保、河川水使用時の殺菌、卵消毒、飼育水温などが指摘された。親から子に垂直伝播するBKDおよび冷水病の有効な防除法として、受精前の等張液による卵 洗浄が紹介された。

(3)さけます類の原虫病対策
 
北海道区水産研究所が、ふ化場で飼育されたさけます類の稚魚に外部寄生する原虫類、イクチオボド、トリコジナとキロドネラの発生状況、病原性および有効な対策を紹介した。病害の程度は、原虫の種類により異なり、魚の状態や飼育環境にも影響を受けるので、原因種と発生状況を正確に把握する必要性を指摘した。
 また、低濃度食酢を用いた駆虫試験の結果を紹介し、原虫の種類により効果が異なること、駆虫作業時には水素イオン濃度(pH)を測定し、排水が河川環境等に影響を与えないように充分配慮する必要があること を説明した。

2 情報提供 (1)平成23年度サケ来遊の総括及び今年度見込み
 
北海道区水産研究所が、昨年の会議で報告したシブリング法と環境要因等を使った重回帰モデルによる平成23年度のサケ来遊見込みについて、見込み値と実際の来遊数を比較し、いずれも見込み値が実績よりも過大に評価されていたことを報告した。
 平成24年度のサケ来遊見込みについて、シブリング法(対象エリア:オホーツク&根室、太平洋、日本海)と環境要因等を使った重回帰モデル(同:オホーツク&根室、えりも以西&本州太平洋)により推定した結果を紹介し、手法の違った複数の方法で見込み値を検討することは、推定手法の精度向上に繋がることが期待されることを説明した。

(2)東日本大震災からの復興状況
 岩手県水産技術センターから、岩手県における東日本大震災によるふ化場の被害状況について、被災直後の残存生産能力は被災前の32%であったことが紹介された。また、7月1日現在の復旧状況が震災前の72%相当であり、今後着手する施設整備で90%まで復旧する見込みであるが、資材不足等で今漁期に間に合うかがカギとなっていることが説明された。また、真の復興は低迷しているさけの回帰尾数を回復させることであり、種卵確保対策が今後の課題であることが説明された。

3 本推進会議及び北水研業務に対する要望及び意見交換 (1)事前に提出された要望及び意見への対応
 北海道さけ・ます増殖事業協会から、「北海道及び本州の太平洋海域に面しているほとんどの地域では、近年、さけの来遊量が減少傾向にあり、その減少要因は、様々な説があるものの、解明されていない。さけ資源の回復は急務であり、この減少要因の解明をお願いしたい」と要望があり、北海道区水産研究所が、「太平洋沿岸域における来遊数減少をはじめ、さけ資源の不安定な変動は、当センターとしても、大きな問題であると認識。北海道や岩手県の研究機関等とも意見交換しながら資源変動に関する研究を継続的に取組んできた。今後も海洋環境を取込んだ資源動態モデルやシミュレーションなど新しい手法を取り入れながら、関係機関と連携して様々な視点から検討を重ねていきたい」と回答した。

(2)当日会場で出された要望及び意見
 当日会場で出された要望及び意見はなし。

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さけます関係研究開発等推進会議
「成果普及部会」議事次第

  1. 挨拶
     主催者:北海道区水産研究所長  福田 雅明
     来賓:水産庁 増殖推進部 栽培養殖課長  前 章裕

  2. 議事

    1 成果情報(さけます類の防疫対策と原虫病対策)
     (1)サケ防疫連絡協議会の設立
         水産総合研究センター 理事  井上 潔
     (2)リスク管理に基づく さけます類の細菌およびウイルス病対策
         北海道大学大学院水産科学研究院 特任教授  吉水 守
     (3)さけます類の原虫病対策
         北海道区水産研究所 さけます資源部次長  浦和 茂彦

  3. 2 情報提供
     (1)平成23年度サケ来遊の総括及び今年度見込み
         北海道区水産研究所 資源評価グループ長  斎藤 寿彦
     (2)東日本大震災からの復興状況
         岩手県水産技術センター 主査専門研究員  小川 元

     

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